2026.10.09 カスハラ対策ウォッチ|小売編③
「カスハラ対策ウォッチ」小売編の第3弾は、スーパーマーケット業界です。コンビニ・外食に続き、毎日の買い物の場であるスーパーで、各社がどんな対策を取っているのかを見ていきます。
今回はまず、業界全体に向けて厚生労働省が示した「対応の型」を押さえたうえで、ライフコーポレーション・まいばすけっと・平和堂グループの3社の取り組みを比較します。
業界共通の指針:厚労省「スーパーマーケット業編」マニュアル
厚生労働省は2025年3月26日、「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)」を公表しました。業界の実態調査や企業ヒアリングをもとに、スーパー特有の対策がまとめられています。周知啓発ポスターや研修動画もあわせて公開されています。
中でも印象的なのが、現場対応の工夫として紹介されている一例です。
店舗内でカスタマーハラスメントに発展した際に、一次対応者が行為者と1対1とならないよう、暗号を用いた館内放送をし、それを聞いた他の従業員や店長がすぐさま現場に駆けつける。
放送できない状況では、近くにいる別の従業員が代わりに放送する運用もあるとされ、「対応者を孤立させない」ことが一貫して重視されています。ほかにも、レジ周りへの通知ボタンの設置検討や、トラブル直後に従業員と顧客を引き離し管理職が引き継ぐ運用、つきまとい被害における警察届け出やシフト変更・送迎といった配慮措置も紹介されています。
スーパーは「レジ」「売場」「電話」など接点が多く、来店客との距離も近い業態です。だからこそ、個人で抱え込ませず、組織ですぐに駆けつける仕組みが対策の核になっています。
各社の取り組み
ライフコーポレーション:2025年2月、グループ共通の基本方針を策定
スーパー大手のライフコーポレーションは2025年2月28日、グループ共通の「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定しました。
- 暴行・傷害、商品や備品の損壊といった身体的攻撃
- 怒声・罵声による威圧、脅迫、暴言、土下座の強要
- 長時間の拘束、差別的な言動
- SNSでの誹謗中傷やそれをほのめかす行為
- 店内や従業員の無断撮影・無断録音
を対象行為として明示したうえで、社内に相談窓口を設け、対処方法の研修を実施。被害を受けた従業員への心身のケアも行うとしています。社外に対しては、毅然とした組織対応を基本とし、悪質なものや犯罪行為と判断した場合は警察・弁護士など外部専門家と連携して法的措置も含め厳正に対処するとしています。
まいばすけっと:2025年7月、小型店ならではの指針を制定
イオングループの小型スーパー「まいばすけっと」は2025年7月17日、カスハラに対する指針を制定しました。
特徴的なのは、対応の最初のステップとして「双方にとって合理的な解決策を話し合う」ことを明記している点です。そのうえで、
- 担当者個人ではなく、組織として対応する
- 警察や弁護士などの外部機関・専門家に相談し、適切に対処する
- カスハラと認めた場合は、今後の来店や取引をお断りすることがある
- SNS上の問題は、イオングループの対応基準に沿って扱う
という流れを整理。従業員への支援体制として、カスハラの知識・対処法・相談窓口の周知や、発生時の対応体制の整備、心身のフォローを迅速に行うとしています。狭い店内・少人数運営が多い小型店ならではの「組織としてすぐ動く」姿勢が明確です。
平和堂グループ:ポスター掲示と健康サポート体制
滋賀県を地盤とする平和堂グループは2024年10月、グループ共通の基本方針を公表しました。厚労省マニュアルの定義に沿う形で、長時間拘束・威嚇脅迫・過度な要求の繰り返し・土下座の要求・不退去などを対象行為として列挙しています。
対応面では、店内へのポスター掲示でお客への理解・協力を求めつつ、組織としての対応体制を構築。カスタマーハラスメントと判断した場合は対応を打ち切り、以降の来店・来社をお断りすることもあるとしています。従業員側には研修の実施に加え、グループ各社への相談窓口設置、そして「平和堂健康サポートセンター」による心身のケア体制を用意している点が特徴です。
3社を並べてみると
| 比較項目 | ライフコーポレーション | まいばすけっと | 平和堂グループ |
|---|---|---|---|
| 発表時期 | 2025年2月 | 2025年7月 | 2024年10月 |
| 対象行為の明示 | あり(撮影・録音含む) | あり(SNSはイオン基準) | あり(厚労省マニュアル準拠) |
| 対応打ち切り・取引停止 | あり | あり | あり(来店・来社お断り) |
| 外部専門家との連携 | 警察・弁護士 | 警察・弁護士 | 警察・外部専門家 |
| 従業員ケアの特徴 | 心身のケア・復職支援 | 心身のフォローを迅速に | 専用の健康サポートセンター |
3社とも「組織対応」「外部連携」「従業員ケア」という骨格は共通しています。一方で、まいばすけっとのように親会社(イオングループ)の統一基準にSNS対応を委ねる形や、平和堂のように専門の健康サポート窓口を独自に持つ形など、グループの規模や成り立ちによって体制の作り方に違いが見られます。
カスハラテックでできること

スーパーの現場で特に効きそうなのが、厚労省マニュアルが挙げていた「暗号放送で応援を呼ぶ」という発想です。これをテクノロジーに置き換えるなら、レジ端末や従業員用の小型デバイスから、ワンタップで店長・近隣スタッフに通知が飛ぶ仕組みが考えられます。大声を出さずに、誰にも気づかれずに応援を呼べることは、対応者の孤立を防ぐうえで重要です。
- ワンタップ通知ボタン:レジや売場端末、スマートウォッチ型デバイスから、店長・応援スタッフへ即座に通知
- 録音・記録の自動化:トラブル対応の音声を自動的に記録し、「言った言わない」のトラブルを防ぐ
- 位置情報との連携:どの売場・レジで発生しているかを通知に含め、駆けつけの初動を早める
当サイトでは、こうした現場向けカスハラテックの事例も随時紹介しています。合わせてぜひご覧ください。
出典・参考
- 厚生労働省:業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)
- 流通ニュース:厚労省/スーパー向けカスハラ対策マニュアル・研修動画を公開
- 流通ニュース:ライフ/カスタマーハラスメントに対する基本方針を発表
- 流通ニュース:まいばすけっと/カスハラに対する指針を制定
- 平和堂:カスタマーハラスメントに対する基本方針


