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いじめ相談が「カスハラ扱い」に? 対策の広がりが、正当な訴えを抑え込む側に回っていないか

最新ニュース解説

2026.10.29 ニュース解説

カスハラ対策が進み、現場の従業員や教職員が守られるようになるのは、本来望ましい変化です。ただ、その「対策」が運用の仕方次第で、正当なクレームや指摘まで一緒に抑え込んでしまう側に回りかねない、という問題提起が出てきています。きっかけは、学校現場での「いじめ相談がカスハラ扱いされた」という訴えです。

何が起きたか

2026年10月1日、学校を対象にしたカスタマーハラスメント防止措置が義務化されました(文部科学省「学校と保護者・地域住民等とのより良い関係構築のためのガイドライン」)。

この施行後、いじめ相談のNPOを運営する阿部泰尚氏(まぐまぐニュース、2026年10月28日掲載)が、自身の相談窓口に寄せられた訴えを紹介しています。氏によると、10月1日から22日の間に寄せられた類似の相談は72件。内訳は、電話での相談・問い合わせができなかった45件、書面でのやり取りを求めたらそれ自体をカスハラ視された33件、保護者が断りを入れて録音しようとしたら拒絶された29件、面談に教職員4人が出てきた13件など(複数回答あり、集計は途中)。

この数字はあくまで一つの相談窓口が独自に集計したもので、文科省や第三者機関による統計ではありません。ただ、いじめという深刻な相談の入り口で、こうした訴えが相次いでいるという事実そのものは、カスハラ対策を考えるうえで無視できない材料です。

指針が実際に禁じているのは何か

ここで確認しておきたいのは、ガイドラインが実際に何を禁じているかです。阿部氏も指摘している通り、指針が問題視しているのは「無断」での録音・撮影であって、断りを入れた録音そのものを禁止しているわけではありません。学校側にも、無断ではなく「相手に断りを入れた上での録音」を勧める記載があります。

つまり、「録音されると言われたら拒否してよい」という運用は、指針の本来の趣旨とは一致しない可能性があります。これは学校に限った話ではなく、企業のカスハラ対策全般にも当てはまる構図です。「対策を導入した」ことと「指針の意図どおりに運用している」ことは、必ずしも同じではありません。

問われているのは「カスハラかどうか」より「運用の姿勢」

今回のケースで気になるのは、個々の判断が間違っているかどうかより、対策が入ったことで現場の姿勢そのものが変わってしまっていないか、という点です。

  • 電話相談を一律で受け付けない
  • 書面でのやり取りの申し出自体を「カスハラの兆候」として扱う
  • 断りを入れた録音の申し出すら拒絶する
  • 面談に複数人を同席させ、相手に圧をかける

これらは、悪質な要求を遮断するための対策というより、「とにかくこちらの負担を減らす」方向に対策を使ってしまっている状態に見えます。カスハラ対策は、理不尽な要求と現場の負担を遮断するための仕組みであって、正当な指摘や相談そのものを遠ざけるための仕組みではありません。この境界線があいまいになると、対策が「相手を黒扱いする前提のフィルター」として機能してしまい、本来守られるべき側(いじめ被害者やその保護者、正当なクレームを持つ顧客)が、入り口で弾かれることになります。

そもそも「カスハラ」と「正当なクレーム」の境界線をどこに引くか自体、現場でも判断が分かれやすいテーマです。この切り分けの基本的な考え方は、以前の記事「カスハラと正当なクレームの違いとは?」で整理しています。

カスハラテックの視点から

カスハラ対策の目的は、現場の従業員・教職員を理不尽な要求から守ることです。その目的を達成するためには、「何が理不尽な要求で、何が正当な申し出か」を区別できる仕組みが欠かせません。録音・録画環境の整備やマニュアル化が進むのは良いことですが、判断基準があいまいなまま「対策を入れたから一律で身構える」という運用になると、本来の目的から外れてしまいます。

実務的には、エスカレーション基準(どのレベルの要求を現場レベルで処理し、どこから上に引き上げるか)を明文化し、「断りを入れた録音の申し出」や「書面でのやり取り」自体はカスハラの兆候として扱わない、という線引きを社内マニュアルに明記しておくことが有効です。対策を入れること自体がゴールになってしまうと、今回のようなケースを招きかねません。

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カスハラ対策が広がるこれからの段階では、「対策を導入したか」だけでなく「対策をどう運用しているか」が問われる局面が増えていくものと思います。

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出典

  • まぐまぐニュース「いじめを相談しただけで『カスハラ扱い』に? 文科省『カスハラ指針』の施行後に学校現場で浮上している大問題」(阿部泰尚、2026年10月28日) https://www.mag2.com/p/news/688192
  • 文部科学省「学校と保護者・地域住民等とのより良い関係構築のためのガイドライン」(令和8年8月)
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