2026.10.15 カスハラ対策ウォッチ|小売編④
「カスハラ対策ウォッチ」小売編、第4弾はドラッグストア業界です。コンビニ・外食・スーパーに続く今回は、マツキヨココカラ&カンパニー、ツルハグループ、サンドラッグの3社を比較します。
ドラッグストアは、レジでの接客に加えて、処方薬の受け渡しや服薬指導など、薬剤師・登録販売者が利用者と一対一でやり取りする場面も多い業態です。実際、当サイトでも薬剤師・登録販売者へのカスハラを個別に取り上げたことがありますが、今回は企業としての「基本方針」というレイヤーに絞って3社を比較します。
方針策定の時系列
| 公表日 | 企業 |
|---|---|
| 2024年9月13日 | ツルハホールディングス、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を制定 |
| 2024年9月27日 | マツキヨココカラ&カンパニー、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定 |
| 2024年11月15日 | サンドラッググループ、「カスタマーハラスメント対策の基本方針」を策定 |
3社とも、業界の方針公表が相次いだ2024年9〜11月にそろっています。コンビニ3社(2024年8〜9月)とほぼ同じタイミングであり、小売業界全体で足並みがそろって動いた時期だったことがうかがえます。
対象行為の列挙の細かさに表れる力点の違い
3社とも、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の定義(要求内容の妥当性に照らして、手段・態様が社会通念上不相当であり、従業員の就業環境が害されるもの)を踏まえている点は共通しています。違いが出るのは、そこから先の「対象行為をどこまで具体的に書き出すか」です。
マツキヨココカラ&カンパニーは、対象行為を約20項目という、3社の中でもっとも細かい粒度で列挙しています。「落ち度のない場合の不当な要求」「商品と無関係な要求」といった要求内容そのものに関する項目から、「言葉尻をとらえる行為」「継続的で執拗な言動」といった言動の性質に関する項目、さらに無断の撮影・録音や、従業員の個人情報のSNS投稿まで、接触を伴わない行為も幅広くカバーしています。現場の店員が「これは当てはまるか」を判断する際の、具体的なチェックリストに近い作り方です。
ツルハホールディングスは、方針そのものを「人的資本経営」の枠組みの中に位置づけているのが特徴です。対象行為の列挙自体はマツキヨココカラと重なる部分が多いものの、方針の冒頭で「従業員が働きやすく働き甲斐を感じられる環境づくり」という経営課題として説明しており、カスハラ対策を単発の防衛策ではなく、人事・経営戦略の一部として打ち出している点が他2社と異なります。
サンドラッグも同様の行為類型(身体的攻撃、精神的攻撃、威圧的言動、土下座の要求、拘束的行動、差別的・性的言動、SNS上の誹謗中傷、無断撮影・録音など)を列挙していますが、公表時期が3社の中でもっとも遅く、方針のボリューム・独自色という点では、先行する2社の内容を踏襲した標準的な作りという印象です。
3社を並べてみると
| 比較項目 | マツキヨココカラ&カンパニー | ツルハホールディングス | サンドラッグ |
|---|---|---|---|
| 公表日 | 2024年9月27日 | 2024年9月13日 | 2024年11月15日 |
| 対象行為の列挙 | 約20項目、非常に細かい | 標準的な項目数 | 標準的な項目数 |
| 入店・利用拒否の明記 | あり | あり(以降の入店をお断り) | あり(以後の入店・取引を断る) |
| 外部専門家との連携 | 警察・弁護士 | 警察・弁護士 | 警察・弁護士 |
| 方針の位置づけ | 従業員の人権尊重が目的 | 人的資本経営の一環として明記 | 従業員の人権・安全な就業環境の確保 |
| 相談窓口の詳細公開 | 記載なし | 記載なし(設置自体は明記) | 記載なし |
共通しているのは、入店・利用拒否を明記していることと、悪質な場合は警察・弁護士と連携すると明記していることです。一方で、相談窓口の具体的な連絡先や利用方法を外部に公開している企業は3社とも見当たりませんでした。これは従業員向けの社内窓口として運用し、対外公開はしていない、という判断と考えられます。
まとめ
ドラッグストア大手3社を比べると、方針の「型」そのものは厚労省マニュアルに沿った標準的なものである一方、マツキヨココカラのように対象行為を約20項目まで書き出して現場判断の助けにする作り方や、ツルハのように人的資本経営という経営レイヤーの課題として位置づける打ち出し方など、同じ業態でも企業によって見せ方に違いがあることが分かります。
処方薬の受け渡しなど一対一の接点が多いドラッグストアだからこそ、方針を「掲示して終わり」にせず、現場でどう判断し、どう報告するかという運用面の設計が、今後さらに重要になりそうです。
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カスハラ対策に関する支援制度は、国・都道府県・市区町村がそれぞれ独自に設けており、内容も対象も大きく異なります。
当サイトでは、国・47都道府県・政令指定都市・中核市などの支援制度を一次情報から調査し、データベースとして公開しています。
出典
- マツキヨココカラ&カンパニー:カスタマーハラスメントに対する基本方針(2024年9月27日策定)
- 流通ニュース:マツキヨココカラ&カンパニー/カスハラ対策の基本方針制定
- ツルハホールディングス:カスタマーハラスメントに対する基本方針
- ツルハホールディングス:ニュースリリース「ツルハグループ『カスタマーハラスメントに対する基本方針』を制定いたしました」(2024年9月13日)
- サンドラッググループ:カスタマーハラスメント対策の基本方針
※各社の方針は公表後に改定される場合があります。最新の内容は各社公式サイトをご確認ください。


