あなたの自治体で使える支援制度を調べる

【第2回】何が変わる?「改正労働施策総合推進法」とカスハラ対策義務化の要点をわかりやすく解説

基礎知識・法改正

2026.10.14 更新(初稿:2026.08.11)

第1回では、カスハラが社会問題化し、義務化という形に至った背景を解説しました。第2回では、2026年10月1日に施行された改正労働施策総合推進法が、企業に具体的に何を求めているのかを整理します。

改正労働施策総合推進法の全貌(2026年10月1日施行)

法律上のカスハラ定義と3つの要件

法律上、カスタマーハラスメントは次の3つの要件で定義されています。

  1. 顧客等の言動であること(潜在的な顧客や取引先の担当者も含まれます)
  2. その言動が社会通念上許容される範囲を超えること
  3. それにより労働者の就業環境が害されること

事業主に求められる4つの措置義務

  • 方針の明確化と周知・啓発
  • 相談窓口の整備
  • 発生時の対応マニュアル整備
  • 相談等を理由とする不利益取扱いの禁止(法33条2項)

それぞれの具体的な進め方は、「社内体制整備の5ステップ」(第4回)で詳しく解説しています。

労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」

被害を放置し、従業員にメンタル不調や休職などの被害が生じた場合、企業は労働契約法第5条の安全配慮義務違反を理由に、民事上の損害賠償責任を問われるおそれがあります。

実際に、カスタマーハラスメントをめぐる安全配慮義務違反が認められた裁判例もあります。医療法人社団こうかん会事件(東京地裁 平成25年2月19日判決)では、入院患者からの暴力を受けた看護師について、病院側が「応援態勢の周知を怠った」として安全配慮義務違反が認定され、約2,000万円の賠償が命じられました。組織的な防止策を取らなかったこと自体が、高額な賠償責任につながり得ることを示す事例です。

自治体による独自条例の拡大:東京都カスハラ防止条例

国の法律に先行して、自治体でも防止条例の制定が進んでいます。東京都のカスハラ防止条例は2025年4月1日に施行されており、次のような内容を定めています。

  • すべての人への禁止規定(第4条、企業間取引も対象)
  • 顧客等の注意義務(努力義務)
  • 事業者の防止措置(努力義務)

中小企業向け奨励金

常時雇用300人以下の都内中小企業が、マニュアル整備や録音・録画機器の導入など1つ以上の取り組みを行うと、40万円の定額奨励金を受けられる制度もあります。申請の最新状況や他の助成金制度との比較は「カスハラ対策・防犯機器導入で使える「国の助成金・補助金」完全ガイド」にまとめています。

なお、国の法律と自治体条例は目的も適用範囲も異なり、どちらか一方で済む話ではありません。両者の違いと実務上の使い分けは「法律と条例の違い」で詳しく解説しています(三重県が全国初の罰則付き条例案を提出するなど、条例側の動きは現在も続いています)。

カスハラ行為に適用され得る刑事罰のライン

悪質なカスハラは、威力業務妨害罪(刑法234条)、不退去罪(刑法130条)、脅迫罪(刑法222条)・強要罪(刑法223条)、恐喝罪(刑法249条)など、刑事罰の対象になり得ます。どこからが犯罪に該当するかの具体的な線引きとチェックリストは「威力業務妨害・不退去・脅迫・強要罪が成立する境界線チェックリスト」にまとめていますので、悪質な事案の対応にはあわせてご活用ください。

まとめ

国の法律は「事業主の義務」として、自治体条例は「社会全体の規範」として、それぞれ異なる角度からカスハラ対策を後押ししています。対策を講じないこと自体が、安全配慮義務違反による損害賠償リスクに直結する時代です。方針策定、窓口設置、マニュアル整備を早急に進めましょう。

次回・第3回では、対策を怠った企業が直面する「3大リスク」を解説します。


次回・第3回

放置は命取り!カスハラ対応を怠った企業が直面する「3大リスク」を徹底解説

第3回を読む →

出典・参考

タイトルとURLをコピーしました