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【法律と条例の違い】国の義務化で自治体条例はどうなる?企業が知っておくべき「2つのルールの使い分け」

基礎知識・法改正

2026.10.14 更新(初稿:2026.08.13)

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策をめぐっては、国の法律と自治体の条例が並立しており、企業が混乱しやすいポイントです。東京都の条例は2025年4月に施行され、2026年10月からは改正労働施策総合推進法により、全事業者への対策が義務化されました。

さらに最近、三重県が全国初となる「罰則付き」カスハラ防止条例案を県議会に提出するなど、自治体の動きも活発化しています。この記事では、国の法律と自治体条例の違いを整理したうえで、企業が実務でどう使い分ければよいかを解説します。


1. 「国の法律」と「自治体の条例」の決定的な3つの違い

項目国の法律(改正労働施策総合推進法)自治体の条例(例:東京都・埼玉県など)
施行時期2026年10月1日自治体ごとに異なる(東京都2025年4月、埼玉県2026年7月など)
対象エリア全国一律制定した自治体の区域内の事業者等
主な対象者事業主(雇用管理上の措置義務)事業者・就業者・顧客等(社会全体の関係者)
目的労働環境の保護(職場のハラスメント対策の一つ)社会全体でカスハラを抑止する理念の共有
法的義務事業主に雇用管理上の措置を義務付け多くは努力義務。三重県は罰則付きの条例案を提出(全国初)

違い①:守ろうとしている対象が違う

国の法律は「労働施策総合推進法」の改正という位置づけのとおり、従業員の労働環境を守ることに主眼があります。一方、自治体の条例は「顧客と就業者が対等な立場でお互いを尊重し合う社会」を目指すものが多く、事業者・就業者・顧客等、社会全体の関係性に焦点を当てています。

違い②:適用されるエリア・事業者が違う

国の法律は全国一律で、すべての事業主が対象です。一方、条例は制定した自治体の区域内の事業者等が対象になります。たとえば埼玉県条例では、営利企業だけでなく、自治会・町内会などの非営利団体や地方公共団体も対象に含まれる点が特徴です。

違い③:罰則の有無が変わりつつある

これまで「カスハラ条例に顧客個人への直接の罰則はない」というのが一般的な整理でした。実際、東京都条例や埼玉県条例に罰則規定はありません。

しかし、この前提が変わりつつあります。三重県が、知事の禁止命令に従わない悪質なケースに対し「50万円以下の罰金または拘留もしくは科料」を科す、全国初の罰則付き条例案を県議会に提出しました(詳細は次章)。

なお、国の法律についても、顧客個人への直接の罰則は現時点ではありません。ただし、企業側が義務化への対応を怠り深刻な被害が生じた場合は、勧告や企業名公表の対象になり得るほか、民事で多額の損害賠償を命じられるリスクがある点は変わりません。


2. 【新情報】三重県が目指す「全国初の罰則付き条例」とは

2026年9月14日、三重県は県議会にカスタマーハラスメント防止条例案を提出しました。成立すれば、罰則を伴うカスハラ防止条例としては全国初となる見込みです。

条例案のポイント

  • 対象行為:正当な理由なく、長時間や繰り返しの形で金銭・物品・謝罪・面会を要求する行為、大声を発して従業員に著しい不安を抱かせる行為、みだらな言動や付きまといなどを「特定カスハラ」と定義
  • 手続き:事業者等からの申告を受け、有識者による審査会が該当性を協議。知事が禁止命令を出しても行為者が改善しない場合に罰則が適用される仕組み
  • 罰則:50万円以下の罰金、または拘留もしくは科料(命令に従わない場合、県が条例違反の疑いで捜査機関へ告発)
  • 施行時期:2027年4月の施行を目指す段階で、2026年10月時点ではまだ条例として成立していません

現時点ではまだ「案」の段階ですが、他の自治体が追随する可能性も考えられます。地域に拠点を持つ企業は、今後の審議の行方を注視しておく価値があります。


3. 企業はどう使い分ける?実務上の3大ガイドライン

結論から言うと、国の法律を基礎に全社共通のルールを作り、条例のある地域では、それを補強する根拠として活用するのが実務上もっとも合理的です。

ガイドライン①:全社一元管理を基本にする

拠点ごとに対応手順を変えると、現場が混乱し、対応のばらつきが新たなリスクになります。まずは国の法定義務を満たす共通マニュアルと基本方針を一つ作成し、全国一律で運用することが基本方針になります(基本方針の文面テンプレートは「基本方針テンプレート」をご覧ください)。

ガイドライン②:条例を「後ろ盾」として使う

悪質なクレームへの対応時、社内規定だけを根拠にするより、地域の条例を根拠として示す方が、毅然とした対応への抑止力になりやすいという実務上のメリットがあります。三重県のように罰則規定を持つ条例が広がれば、この「後ろ盾」としての実効性はさらに高まります。

ガイドライン③:出店地域の条例動向を定期的に確認する

東京都・埼玉県はすでに条例が施行済みです。三重県のほか、島根県など条例の制定・検討を進める自治体も増えています。拠点のある自治体、または拠点を検討しているエリアの条例の有無・内容は、半年に一度を目安に確認しておくことをおすすめします。


4. まとめ

国の法律と自治体の条例は対立するものではなく、相互に補完し合う関係です。条例が社会的な認識や規範を形成し、国の法律が企業に体制整備を義務付ける、という構造で理解しておくとよいでしょう。

ただし、「条例に罰則はない」という前提は、三重県の動きによって崩れつつあります。2026年10月の国の義務化への対応を最優先としつつ、拠点のある地域の条例の動向、特に罰則化の流れにはアンテナを張っておくことをおすすめします。

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出典・参考

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