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【法律と条例の違い】国の義務化で自治体条例はどうなる?企業が知っておくべき「2つのルールの使い分け」

基礎知識・法改正

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を進める上で、多くの企業が混乱しやすいのが「国の法律」と「自治体の条例」のダブルスタンダード(二重基準)です。

2025年4月に施行された「東京都カスタマーハラスメント防止条例」をはじめ、複数の自治体が独自の条例を制定・検討する中、さらに2026年10月からは「改正労働施策総合推進法」による国レベルでの全事業者への義務化がスタートします。

「結局、どちらのルールを基準に対策を作ればいいの?」「条例がある地域とない地域で対応を変えるべき?」という疑問に対し、企業の実務担当者が押さえておくべき「2つのルールの違いと使い分け」を分かりやすく解説します。


1. 「国の法律」と「自治体の条例」の決定的な3つの違い

まずは、2026年10月施行の「国の法律」と、東京都をはじめとする「自治体の条例」の全体像を比較してみましょう。

法律と条例の比較一覧表

比較項目国の法律(労働施策総合推進法)自治体の条例(東京都など)
施行時期2026年10月1日施行自治体ごとに順次施行(東京は2025年4月〜)
対象エリア日本全国のすべての事業者当該自治体の区域内(例:東京都内)
主な対象者事業主(雇用主としての責任)顧客・事業者・従業者・住民すべて
目的・役割従業員の「就業環境(労働環境)」を守る社会全体でカスハラを「禁止・抑止」する
法的義務雇用管理上の措置(体制整備)の義務化禁止の明文化、責務規定(基本は努力義務)

違い①:守る対象の範囲(労働環境 vs 社会全体)

  • 国の法律: あくまで「労働法」の枠組みであるため、「企業が従業員(労働者)を守るための社内体制を作る義務」にフォーカスしています。
  • 自治体の条例: 労働者だけでなく、消費者の権利や地域住民の関係性も含めた「社会全体でカスハラという迷惑行為そのものを無くしていこう」という広い理念を持っています。

違い②:対象となるエリアと事業者

  • 国の法律: 本社や店舗の所在地に関わらず、全国一律で義務化が適用されます。
  • 自治体の条例: 条例が制定されている自治体内に所在するオフィスや店舗、あるいはその地域で活動する事業者にのみ適用されます。

違い③:罰則や強制力の有無

現時点では、国の法律・自治体の条例ともに「カスハラを行った顧客個人を直接逮捕したり、罰金を科したりする罰則」はありません。
ただし、国の法律(義務化)を無視して体制整備を怠り、社内で深刻な被害や自殺等が発生した場合は、行政からの「勧告・企業名公表」の対象となるほか、民事裁判で多額の損害賠償を命じられるリスクが極めて高くなります。


2. 企業はどう使い分ける?実務上の3大ガイドライン

「東京に本社があるが、全国に支店や店舗がある」「ネット通販なので全国の顧客からクレームが来る」といった場合、企業はどちらを基準にすべきでしょうか。結論は「国の法律をベースに全社ルールを作り、条例のある地域ではプラスアルファの根拠として活用する」のが正解です。

ガイドライン①:全社一元管理(全国一律)のルールを作る

エリアごとにカスハラ対応マニュアルを変えるのは現場の混乱を招きます。2026年10月からは全国で国の法律が適用されるため、もっとも基準の厳しい「国の法定義務(4つの必須措置)」を満たす全社共通マニュアル・基本方針(ポリシー)を1つ作成し、全国の拠点で一元運用するのが最も効率的です。

ガイドライン②:条例は「毅然としたお断り」の強力な後ろ盾にする

自治体の条例には、明確に「何がカスハラにあたるか」「カスハラは行ってはならない」と明文化されています。
そのため、実際に悪質なクレーマーに対峙した際、「当社の規定」と言うよりも「東京都の条例(または地域の条例)に基づき、これ以上の対応はお断りいたします」と伝える方が、顧客を諦めさせる強力な法的後ろ盾(抑止力)になります。

ガイドライン③:出店地域の条例制定ステータスを把握しておく

現在、東京都をはじめ、埼玉県、三重県、島根県など、多くの都道府県や市区町村で独自条例の制定・検討が急速に進んでいます。自社のオフィスや店舗がある自治体の動きは定期的に法務・総務部門でキャッチアップしておきましょう。


3. まとめ:二重基準を恐れず、まずは「国の義務化」へ集中を

国の法律と自治体の条例は、対立するものではなく「お互いを補完し合う関係」です。条例が「カスハラはいけないことだ」という社会的ムード(認知)を作り、国の法律が「だから企業は体制を整えなさい」と実務を義務付ける構造になっています。

企業としては、まずは目前に迫る2026年10月の「国の義務化(雇用管理上の措置)」に照準を合わせ、社内体制とマニュアルの構築を一最優先で進めることが、最もブレのない確実な防衛策となります。


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