2026.09.18 最新ニュース解説
三重県四日市市が、2026年10月から市役所の窓口にカスハラ対策として録音機器を導入することを明らかにしました。9月16日の定例会見で森智広市長が発表したもので、条例制定に先立ち、まず「録音」という具体的な手段を先行して動かす形です。
対策の中身と、その背景にある職員アンケートの数字を見ていきます。
▶ 元記事:四日市市議会議員・荒木みゆき氏のブログに掲載された新聞記事(記者:大島康介氏)
全窓口一律ではなく、「状況に応じて」
市によれば、録音機器は市役所の窓口対応において10月から積極的に活用されます。ただし、すべての窓口対応で一律に使うわけではなく、状況に応じて使う形が取られるとのことです。
これは、公務員へのカスタマーハラスメント(カスハラ)対策として、大声での威圧や同じ要求の繰り返しによって市職員が疲弊するといったケースが実際にあったことを受けた対応です。今回の方針は「市職員カスハラ対策基本方針」としてまとめられました。
「録音するかもしれない」という周知そのものが抑止力
この施策で興味深いのは、録音機器の役割が「証拠を残すこと」だけに置かれていない点です。
市の総務課担当者は、「録音するかもしれないと周知することはカスハラの抑止につながる」と説明しています。実際に録音するかどうかにかかわらず、”録音される可能性がある”という認識を相手に持たせること自体が、行き過ぎた言動を思いとどまらせる効果を持つ、という発想です。
もちろん、実際に記録が残ることで「カスハラの証拠を残す意味もある」と、事後の対応や立証にも活用できる位置づけです。電話対応での「この通話は録音されています」というアナウンスと同じ発想を、対面の窓口にも広げた形といえます。技術そのものの機能に加えて、”技術があると知らせること”自体を対策として設計している点が、この事例のポイントです。
職員の6割超が「カスハラを受けたことがある」
この対応の背景には、深刻な数字があります。市が2025年度に実施した職員アンケートでは、回答した1,823人のうち1,111人(61%)が「過去3年間にカスハラ行為を受けたことがある」と回答しました。
これまで本サイトで紹介してきた数字と比べても高い水準です。大阪府職員を対象にした調査では「約4分の1」、Job総研の一般就業者調査では不満経験者のうち「44%が言えなかった」という結果でしたが、四日市市の場合は職員の過半数が実際に被害を経験しているという、より切迫した実態が明らかになっています。
森智広市長は「職場環境を守らなければならない」と述べ、対策の必要性を強調しました。
条例は「令和9年度前半」に施行へ
会見では、録音機器の導入と合わせて、カスハラ防止を目的とした条例を令和9年度(2027年度)前半に施行する方針も示されました。
まず10月から運用面(録音機器の活用)で対応を始め、その後、制度としての裏付けとなる条例を整備するという、段階的な進め方です。前回お伝えした「令和9年度施行」という方針が、今回の会見でより具体的な時期として固まった形です。
まとめ
四日市市の事例で注目すべきは、録音機器という技術そのものよりも、「使うかもしれない」と周知することを対策の核に据えている点です。すべての窓口に一律導入するのではなく、必要な場面で使う姿勢を見せることで、抑止と証拠保全の両方を狙う。10月1日の国の義務化を前に、限られた予算と人員でも取り入れやすい現実的な一手として、他の自治体にとっても参考になりそうです。
自分の自治体で使える制度を調べる
カスハラ対策に関する条例・支援制度は、都道府県だけでなく市区町村単位でも独自に整備が進んでいます。内容も対象も自治体ごとに異なります。
当サイトでは、国・47都道府県・政令指定都市・中核市などの支援制度を一次情報から調査し、データベースとして公開しています。都道府県と事業の分野を選ぶと、守るべきこと・無料で使える支援・費用の補助が一覧で表示されます。
出典
- 四日市市議会議員 荒木みゆき 公式ブログ掲載の新聞記事(記者:大島康介氏、2026年9月16日発会見分)
- 四日市市「市職員カスハラ対策基本方針」(2026年9月16日発表)
