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【ニュース解説】厚労省が訪問介護・ケアマネ防犯に新予算計上へ|「防犯グッズより、行かない選択肢を」現場の声から考える制度とツールの本丸

最新ニュース解説

訪問先のお宅に一人で向かうケアマネジャーやホームヘルパーの安全をどう守るか。

今年6月に埼玉県川口市で起きた痛ましい事件などを機に、逃げ場のない「居宅の密室」で起きる暴力やカスハラへの不安は、現場で働くみなさんにとって切実な日常の課題になっていますよね。

こうした現場の危機感を受け、厚生労働省が公表した老健局関係の予算概算要求において、訪問介護員やケアマネジャーの防犯・安全対策に特化した「2本の新規事業(計83億円規模)」が盛り込まれました(※現在は概算要求段階であり、今後の国会審議を経て成立する見通しです)。

国が公費による支援へ舵を切ったこと自体は前進と言えますが、このニュースが報じられると、SNSなどでは現役のケアマネジャーや介護職のみなさんから、

「防犯グッズを渡されても、何かピントがずれている気がする…」

「重装備をして危険な現場へ向かう前に、そもそも『訪問しない・断る』選択肢を制度として認めてほしい」

といった、現場の実感を突いた非常にリアルな声が多く上がっています。

厚労省が示した予算の中身を整理するとともに、現場から上がっている「運営基準の見直しこそが本丸ではないか」という切実な問いについて、一緒に考えてみたいと思います。

一次情報から見る「2つの新規事業」と予算規模

まずは、今回の老健局概算要求に盛り込まれた支援策の骨子と数字を確認しておきましょう。

【厚生労働省:老健局 概算要求における安全確保支援事業】
  1. 地域の訪問介護等体制づくり支援事業(新規:34億円)
    ・地域における在宅系サービス継続のための安全対策推進支援
    ・業務中の危険回避・安全確保に資する備品等の導入支援
    ・複数名での同行訪問の支援、関係機関との連携体制構築
    (※令和7年度補正予算:56億円)
  2. ケアマネジャーが安心して働ける環境づくり支援事業(新規:49億円)
    ・ケアマネジャーが安心して働ける体制の確保に係る支援
    ・ハラスメント等への体制整備、防犯対策の支援
    ・複数名での同行訪問にかかる取組等の支援
    (※令和7年度補正予算:14億円)

訪問介護向けに34億円、ケアマネジャー向けに49億円と、合計で83億円規模(補正予算を含めるとさらに手厚い規模)の支援が要求されています。

これまでの「各事業所の自己責任」という枠組みから一歩進み、機器導入や2人訪問への財政支援に国が踏み込んだことは確かな変化と言えます。

現場が感じている「そうじゃない感」の正体とは?

しかし、この方針に対して現場から真っ先に上がったのは、「ありがたい」という歓迎の声ばかりではありませんでした。

  • 「身を守る装備を渡すから、危ない家にも行ってこいということ?」という違和感
    防犯ブザーやGPS、極端な話では防護ベストのようなツールを揃えても、「危険と分かっている密室にスタッフを向かわせる」という前提そのものが変わらなければ、根本的な恐怖は消えませんよね。
  • 「複数人で行く前に、行かない選択をさせてほしい」
    人手不足の中で毎回2人体制を組むこと自体が現場の重荷になります。それよりも「暴力や激しい威圧があるなら、訪問自体を見合わせる」という判断が認められるべきではないか、という声です。
  • 「運営基準の柔軟化こそが本丸ではないか」
    ケアマネジャーに義務付けられている毎月のモニタリング訪問などを、危険が予見されるケースでは「電話やオンラインに切り替える」「事業所や公共施設など安全な場所で面談する」といった運用を制度として認めてほしい、という切実な意見です。

「装備を固めて突入するのではなく、危険を避ける権利を保証してほしい」。

この指摘は、現場の安全を守る上でまさに核心を突いているのではないでしょうか。

「断る・行かない」を実現するためにも、客観的な証拠が必要になる

現場のみなさんがおっしゃる通り、「危険な場合は訪問しない、契約を解除できる」という運営基準のルール化こそが最も本質的な防衛策です。

ただ、現実の運用を考えると、もうひとつクリアしなければならない壁があります。

いざ事業所が「身の危険を感じるので訪問を見合わせます」「契約を解除します」と伝えたとき、相手側やその家族から、

  • 「介護放棄(ネグレクト)だ、市役所に訴えてやる!」
  • 「ちょっと強く言っただけなのに、勝手に拒否された!」

といった猛反発や水掛け論が起きるケースは少なくありませんよね。行政(保険者)に対しても、「なぜ訪問を拒否したのか」について正当な理由を説明する責任が生じます。

だからこそ、「運営基準(制度)の改正」と「現場の客観的エビデンス(カスハラテック)」は両輪になってきます。

【現場を本当に守る「2段構え」の防衛ライン】
  1. 制度・ルールの確立(本丸)
    危険ケースでの「訪問見合わせ」「オンライン代替」
    「正当な理由によるサービス拒否」の明文化
  2. テクノロジーによる事実保全(盾)
    「これだけの暴言や威嚇があった」と一発で証明できる
    通話録音、ポケット内のスマートボタンによる記録

「正当な理由」を誰もが納得できる客観的なデータとして残せる仕組みがあって初めて、事業所は堂々と「これ以上の訪問は職員の安全確保のため行いません」と毅然とした判断を下せるようになります。

予算を活かし、本当に安心できる現場をつくるために

今回要求された予算(備品導入や同行訪問の支援)は、決して無駄なものではありません。

どうしても訪問が必要な初期対応や、初回訪問時の万が一のリスクを減らす上では、心強いサポートになります。

ただ、それを「とりあえずブザーを買って終わり」「2人で行けば解決」という安易な結論にしてしまっては、現場の不安は解消されませんよね。

  • 道具は「相手を刺激しないサイレント機能」や「記録性」を重視する
  • 道具の導入とセットで、「ここまで来たら訪問を打ち切る」事業所ルールを明確にする
  • 国や自治体に対しても、モニタリング訪問の柔軟化やサービス拒否基準の明確化を引き続き求めていく

「現場のスタッフに過度な我慢を強いらない環境」をつくるために。

予算の動きを賢く活用しながら、制度の見直しと足元の防衛ツールの両面から、現場に確かな安心を届けていきたいものですね。

参考・出典情報

  • 公的資料・一次情報:
    • 厚生労働省 老健局:令和9年度 厚生労働省所管予算概算要求の概要(老健局)
      • 事業①:「地域の訪問介護等体制づくり支援事業」(新規34億円/令和7年度補正予算56億円)
        担当:認知症施策・地域介護推進課
      • 事業②:「ケアマネジャーが安心して働ける環境づくり支援事業」(新規49億円/令和7年度補正予算14億円)
        担当:認知症施策・地域介護推進課
  • 関連法令・指針:
    • 厚生労働省令:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(モニタリング訪問等の規定)
    • 労働施策総合推進法(カスハラ防止措置義務化)
    • 労働契約法第5条(使用者の安全配慮義務)
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