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訪問介護のカスハラ対策を比較|大手3社×中小3法人、方針の違いを読む

医療・介護編

2026.10.21 カスハラ対策ウォッチ|医療・介護編②

前回の記事では病院3施設のカスハラ対策方針を比較しましたが、今回は訪問介護に目を向けます。利用者の自宅という「密室」に、ヘルパーが基本的に一人で入っていく訪問介護は、他業種と比べてもカスハラのリスクが際立つ現場だと言われています。助けを呼びにくく、第三者の目も届きにくいからです。

今回は、SOMPOケア・ニチイホールディングス・セントケア・ホールディングという大手3社と、訪問介護を運営する中小3法人(株式会社ケアワーク弥生、社会福祉法人龍鳳、社会福祉法人愛護会)の、計6つの方針を比較してみました。規模の違いが方針の中身にどう表れるか、という視点で読んでみてください。

6法人の方針、規模と公表時期

法人名規模・形態公表時期
SOMPOケア大手(損保ジャパン系列、全国展開)記載なし
ニチイホールディングス(ニチイ学館)大手(全国展開)2025年4月1日
セントケア・ホールディング大手(東証上場)記載なし
株式会社ケアワーク弥生中小(訪問介護事業所を運営)2025年6月1日
社会福祉法人龍鳳中小(訪問介護を含む複数サービス)2025年4月1日
社会福祉法人愛護会中小(傘下の「庄の里ヘルパーステーション」が指定訪問介護を運営)2025年4月1日

大手3社はいずれも全国規模で展開しているぶん、方針も「グループ全体で共有する」「厚労省の定義に沿った網羅的な記述にする」という作り方をしている印象です。一方の中小3法人は、地域に根ざした運営規模だからこそ、現場の実情に即した一文が入りやすいようにも感じました。

大手ならではの網羅性、中小ならではの具体性

SOMPOケアの方針で目を引いたのは、「認知症等の疾患・障がいの症状(BPSDなど)による言動は、医療的対応が必要なケースとしてカスハラの対象外とする」という一文です。介護現場では、利用者本人の病状による言動と、悪意あるハラスメントとの線引きが難しい場面が少なくありません。この一文は、まさにその現場の悩みに正面から答えるものだと思います。

ニチイホールディングスは、対象行為を心身への攻撃・謝罪の強要・執拗な繰り返し・居座り・差別的言動・不合理な金銭要求・SNSでの誹謗中傷と幅広く列挙し、「グループ会社とも方針を共有し、取り組みを推進する」という一文で締めています。大手らしく、網羅性とグループ統制を意識した書き方です。

セントケア・ホールディングは、「身体への緊急の危険がある場合は、直ちにサービスの中止や契約解除を行う」という即応規定が特徴的でした。まずは話し合いによる関係再構築を試みるが、緊急時は判断を待たず即断する、という段階分けが明確です。

一方、中小3法人はというと——龍鳳は「内容把握のため録音することがある」と、記録を取ること自体を方針に明記しているのが他にない特徴です。また「社会生活への適応能力や障害に起因する言動は、カスタマーハラスメントとは別に扱う」とあり、これはSOMPOケアの考え方と近い発想と言えそうです。愛護会は判断窓口の設置と顧問弁護士・警察との連携を明記し、ケアワーク弥生は「被害を受けた従業員のケアを最優先する」という職員保護の姿勢を冒頭に置いている点が印象的でした。

対応策、「段階を踏む」か「原則を示す」か

対応策の書き方にも、6法人で違いが見られました。

  • SOMPOケア・ニチイ・セントケア:研修・相談窓口の整備、警察や弁護士との連携体制など、組織としての「仕組み」まで含めて記述
  • 龍鳳:契約解除・中止の際に「30日以上の猶予を設ける」という具体的な期間まで明記
  • ケアワーク弥生:社内対応(職員ケア優先)と社外対応(話し合い→対応打ち切り→警察・弁護士連携)を分けて整理
  • 愛護会:理性的な話し合いを求めたうえで、行為が続く場合はサービス提供を断る、または中止するという比較的シンプルな構成

大手3社が「組織としての体制整備」まで踏み込んで書いているのに対し、中小3法人は「何をもってカスハラと判断し、どう対応するか」という現場の運用ルールに寄せた書き方をしている、という傾向が見えました。

訪問介護ならではの難しさ

訪問介護には、病院や小売店にはない独特の難しさがあります。ヘルパーは基本的に一人で利用者の自宅を訪問するため、何かトラブルが起きても、その場に同僚や上司はいません。大声を出されても、暴言を吐かれても、助けを呼ぶこと自体が難しい環境です。

さらに、利用者本人の病状(認知症の症状など)に起因する言動と、悪意あるハラスメントとの線引きが難しいことも、他業種にはない論点です。SOMPOケアや龍鳳の方針が、わざわざこの点に触れているのは、現場でそれだけ判断に迷う場面が多いということの裏返しでもあるのでしょう。

方針として「毅然と対応する」「警察と連携する」と書いてあっても、密室の中で実際に何が起きたのかを後から証明できなければ、組織として動きようがありません。ここは前回の病院編でも触れた点ですが、訪問介護こそ、記録・証拠化の仕組みがものを言う現場だと言えそうです。

この比較から見えること

大手3社と中小3法人を並べてみると、規模が大きいほど「組織としての体制」を、規模が小さいほど「現場での具体的な運用」を書く傾向がうかがえました。ただし規模にかかわらず、訪問介護という業態特有の「密室性」「一対一の対応」「病状起因の言動との線引き」という課題は共通しています。方針の文言を整えるだけでなく、実際に現場で何が起きたかを記録・証明できる仕組みづくりが、この業界には特に求められていそうです。

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出典

※各法人の方針は随時更新される可能性があります。最新情報は各法人の公式サイトでご確認ください。なお、ベネッセスタイルケアについても同様の方針PDFの存在を確認しましたが、本記事の調査時点ではサイト側の制限により本文を直接確認できませんでした。

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