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バス・タクシー業界のカスハラ対策を比較|現場の声をそのまま伝える啓発ポスターと、2つの業界方針

サービス業編

2026.10.11 カスハラ対策ウォッチ|サービス業編②

サービス業編の第1弾は鉄道でしたが、同じ公共交通でも、バス・タクシーは「運転士・乗務員が1人で乗客と向き合う」という点で事情が異なります。ワンマン運行が基本のバスも、個人営業に近いタクシーも、現場で孤立しやすい業態です。今回はこの2つの業界団体の対策を見ていきます。


バス業界:実際の事例をそのまま伝える啓発ポスター

日本バス協会は2024年9月、業界共通の「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を公表しました。厚生労働省の企業マニュアルに基づき、長時間拘束・理不尽な要望の繰り返し・暴言暴力・威嚇脅迫・SNSでの誹謗中傷などをカスハラの対象行為として例示し、尊厳を傷つける要求には毅然と対応するとしています。

この方針で終わらないのがバス協会のユニークな点です。全国のバス事業者から寄せられた実際のカスハラ事例をもとに、4コマ漫画スタイルの啓発ポスターを2024年9月から順次公開しています。

第1弾(2024年9月)は、ICカードの運賃タッチが正常に読み取られず、乗務員が「もう一度タッチお願いします」と確認を求めたところ、乗客が「タッチしただろうが」と声を荒らげる、というよくある場面を描いています。

出典:公益社団法人日本バス協会「カスタマーハラスメント対策ポスター」(2024年9月)

その後も、乗客自身の言葉をそのままタイトルにしたポスターが続きます。

  • 第2弾「ここで降ろせ」:イヤホンで車内アナウンスを聞き逃し、バス停を乗り過ごした乗客が、運転士に「今すぐここで降ろせ」と迫るケース。バスは道路運送法に基づき届け出た経路・停留所でしか乗降できず、逸脱すれば法令違反になることを伝えています。
  • 第3弾「お前が手配しろ」
  • 第4弾「乗るから開けて」:バス停ではない場所での乗車を強要するケース。
  • 第5弾「ちょっとくらい待て」

タイトルはすべて、実際に運転士が投げかけられた言葉そのものです。「よくあるクレームの類型」を抽象的に説明するのではなく、乗客自身の言葉を見せることで、何が問題なのかを直感的に伝えようとしている点が特徴的です。


タクシー業界:合理的な話し合いから毅然とした対応まで

全国ハイヤー・タクシー連合会も「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定しています。カスハラを「お客様から従業員に対して行われる著しい迷惑行為であって、従業員の就業環境を害するもの」と定義し、暴力・暴言・誹謗中傷・脅迫・人格否定・差別的発言・土下座の要求・長時間の拘束・過剰な対応の強要・不当な要求・信用を損なうSNS投稿・つきまといなどを例示しています。

対応の流れは次の通りです。

  1. 問題解決にあたっては、まず合理的な話し合いを行う
  2. カスタマーハラスメントに該当すると判断した場合は対応を打ち切り、以降のサービス提供を断ることがある
  3. 悪質と判断した場合は、警察・弁護士等と連携して毅然と対応する

会内の対応としては、被害を受けた乗務員のケアを最優先に、研修の実施、相談窓口の設置、警察・弁護士との連携体制の整備を進めるとしています。


2つの業界を並べてみると

比較項目日本バス協会全国ハイヤー・タクシー連合会
策定時期2024年9月公表あり(策定日は非公開)
定義の根拠厚労省企業マニュアルに準拠独自定義(著しい迷惑行為)
対応の打ち切り基準明記なし(毅然と対応)カスハラ該当時に対応打ち切り・サービス提供拒否
現場への伝え方の工夫実例に基づく啓発ポスター(4コマ漫画)研修・相談窓口中心

骨格となる「組織対応」「警察・弁護士との連携」「毅然とした対応」はどちらも共通していますが、バス協会の啓発ポスターのように、乗客に向けて直接・具体的に発信するアプローチは、他の業界にも応用できそうな工夫です。「べからず集」を抽象的に並べるより、「ここで降ろせ」という一言の方が、読んだ人の記憶に残りますね。


カスハラテックでできること

バス・タクシーに共通するのは、運転士・乗務員が「1人で」乗客と向き合う時間が長いという構造です。鉄道のように駅員が複数人体制で対応できる場面は限られます。

  • ドライブレコーダー・車内カメラの音声記録:すでに多くの車両に搭載が進んでいますが、「録音している」ことの車内掲示を徹底することが、同時に抑止効果にもなります
  • 緊急通報ボタンとの連携:運転席から目立たず押せる通報ボタンがあれば、同僚や運行管理者への連絡を妨げずに応援を呼べます
  • 乗客向けの掲示・啓発の自動更新:バス協会のポスターのように、実際にあった事例を踏まえた掲示を定期的に入れ替える仕組みがあれば、「よくある事例」への抑止力が持続します

運転席という閉じた空間だからこそ、記録と「見える化」の両方が効いてくる業態だと思います。

▶ カスハラ支援制度データベースを見る


出典・参考

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