2026.10.13 更新(初稿:2026.08.13)
改正労働施策総合推進法によるカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置は、2026年10月1日に義務化がスタートしました。社外向けに公表する「基本方針」とあわせて重要なのが、社内の就業規則への規定追加です。
当サイトでは、公式サイトや店舗に掲示する社外向けの基本方針については「基本方針テンプレート」で解説していますが、この記事ではその”内側”にあたる、就業規則に追加する条文サンプルを紹介します。
1. 規定追加が必要な理由
社外向けの基本方針だけでなく、就業規則にも規定を追加しておくべき理由は主に3つあります。
- 法定義務の履行を示す根拠になる:改正労働施策総合推進法が求める「雇用管理上の措置」を、社内規程として明文化した証拠になります
- 相談窓口や対応フローの社内的な根拠になる:現場が「誰に、どう相談してよいか」を就業規則に基づいて判断できるようになります
- 不利益取扱いの禁止とプライバシー保護を明文化できる:相談した従業員が不利益を受けないこと、情報が適切に保護されることを、社内ルールとして担保できます
2. 条文サンプル:カスタマーハラスメント防止・従業員保護規程
既存のハラスメント防止規定(パワハラ・セクハラ等)に章を追加する形、または独立した規程として新設する形のどちらでも利用できます。条番号は、挿入する就業規則の既存の条文に合わせて調整してください。
第〇条(カスタマーハラスメントの防止と従業員の保護)
第1条(目的)
本規程は、顧客、取引先その他の第三者(以下「顧客等」という)からの
著しい迷惑行為(以下「カスタマーハラスメント」という)から従業員を保護し、
働きやすい職場環境を維持することを目的とする。
第2条(定義)
カスタマーハラスメントとは、顧客等の要求の内容が妥当であるかにかかわらず、
その手段・態様が社会通念上不相当であり、従業員の就業環境を害する行為を
いう。具体的には、次の各号に掲げる行為を含む。
一 身体的な攻撃
二 精神的な攻撃
三 威圧的・継続的な言動
四 不退去・長時間の拘束等の拘束的行動
五 不当・過度な要求
六 従業員個人への攻撃(氏名の公表、SNSでの中傷等)
七 性的な言動、ストーカー行為等
第3条(会社の責務と基本方針)
会社は、カスタマーハラスメントの発生時、従業員個人に対応を負わせることなく
組織として介入し、従業員を保護する。なお、正当な理由に基づく苦情・要望には
誠実に対応する一方、カスタマーハラスメントに該当する行為には毅然として対処し、
対応の中断、退去要請、警察への通報を含む法的措置を講じることがある。
第4条(相談窓口および体制)
会社は、カスタマーハラスメントに関する相談窓口を設置し、担当者を定める。
従業員は、被害を受けた場合または被害を受けるおそれがある場合、速やかに
窓口に相談するものとする。
相談窓口:【〇〇部〇〇課】
電話:【〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇】 メール:【〇〇@〇〇.co.jp】
第5条(報告があった場合の措置)
会社は、相談を受けた場合、速やかに従業員の安全を確保したうえで、事実関係を
調査し、記録する。調査の結果、必要と認めるときは、被害を受けた従業員への
ケア・配慮を行うとともに、悪質な事案については弁護士・警察と連携し、
行為者に対する出入り禁止の通告等の措置を講じることがある。
第6条(不利益取扱いの禁止)
会社は、本規程に基づき相談を行った従業員、または事実関係の確認に協力した
従業員に対し、そのことを理由として不利益な取扱いを行わない。
第7条(プライバシー保護・秘密保持)
相談への対応にあたっては、相談者・行為者等のプライバシーに配慮し、知り得た
秘密を厳守する。
利用上の注意:この条文はあくまでサンプルです。実際に就業規則へ追加する際は、自社の既存規程との整合性を確認し、社会保険労務士・弁護士に事前に相談することを強くおすすめします。
3. 実務手続きと注意点
① 就業規則の変更届出
常時10人以上の労働者(パート・アルバイトを含む)を使用する事業場は、就業規則を変更した場合、所轄の労働基準監督署へ以下を提出する必要があります。
- 就業規則(変更)届
- 改定後の条文、または新旧対照表
- 労働者代表の意見書
② 全従業員への周知
就業規則の届出と同時に、労働基準法第106条に基づき、変更内容を全従業員へ周知する義務があります。周知の方法は、次のいずれかによります。
- 社内グループウェア・イントラネットへの掲載
- 各作業場の見やすい場所への備え付け
- 書面での配布、またはメールでの送付
4. まとめ
社外向けの基本方針と、社内の就業規則への規定追加は、どちらか一方ではなくセットで整備することが重要です。基本方針が「会社の対外的な姿勢表明」だとすれば、就業規則の規定は「それを実行するための社内ルール」にあたります。
この記事の条文サンプルを土台に、自社の実情に合わせて調整し、社会保険労務士・弁護士の確認を経たうえで、早めの整備を進めてください。
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出典・参考
- 厚生労働省:カスタマーハラスメント対策(企業マニュアル・業種別マニュアル)
- 東京都:カスタマーハラスメント防止条例・事業者向け指針
- 労働基準法第106条(就業規則の周知義務)
- 改正労働施策総合推進法(カスタマーハラスメント防止措置の義務化、2026年10月1日施行)


