あなたの自治体で使える支援制度を調べる

鉄道各社のカスハラ対策を比較|業界ぐるみの取り組みと、JR東日本・東急の一手

サービス業編

2026.10.07 カスハラ対策ウォッチ|サービス業編①

小売や外食と違い、鉄道業界のカスハラ対策には、業界団体が音頭を取って足並みを揃えてきたという特徴があります。日本民営鉄道協会(民鉄協)の資料と各社の発表から、業界全体の動きと、各社のとがった一手を見ていきます。

▶ 元記事:日本民営鉄道協会 カスタマーハラスメント対策について(一般社団法人日本民営鉄道協会)


業界ぐるみで動いた鉄道業界

鉄道業界では、以前から駅係員・乗務員への暴力行為防止に業界横断で取り組んできた経緯があります。民鉄協が集計した大手民鉄16社(東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄)のデータによれば、2023年度上期(4〜9月)だけで暴力行為は71件発生。深夜帯(22時〜終電)や酒気帯びの客による被害が多く、半数以上が飲酒を伴っていたといいます。

この延長線上で、2023年11月29日には、民鉄協・JR6社・札幌市交通局・東京都交通局など91社局が共同で、暴力行為防止を呼びかけるポスター「酔った勢い、STOP!」を制作。駅構内約5,400枚、列車内約52,000枚という規模で掲出しました。

そして同年12月14日、民鉄協は加盟72社の協力のもと、「民営鉄道業界におけるカスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定しました。直接の暴力だけでなく、大声でのクレームや威嚇、人格否定といった、暴力に至らない迷惑行為まで対象を広げた、業界共通のルールです。


JR東日本:「対応しない」と明記

2024年4月、JR東日本グループは方針を策定し、カスハラに該当すると判断した場合は「お客さまへの対応をいたしません」と、対応そのものを打ち切る姿勢を明文化しました。暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求などをカスハラの該当行為として定義し、悪質な場合は警察・弁護士と連携するとしています。

「毅然とした対応」という表現にとどめる企業が多い中、「対応しない」と言い切った点は、他業界と比べても踏み込んだ表現です。


東急電鉄:「4人に1人」の実態を公表

東急・東急電鉄は2024年8月、方針の策定と合わせて、現場の実態調査の結果を公表しました。2023年度に実施した意識調査では、鉄道の現業で働く職員の4人に1人が、直近1年間に自身がカスハラを受けた、または職場で見聞きしたと回答しています。

発表では「従業員のネクタイを引っ張る」「怒鳴りながらICカードを投げつける」といった、現場でのヒアリングに基づく具体的な行為例も明らかにしました。該当行為があった場合は接客を中断するとし、今後は駅窓口への音声カメラの導入や、従業員名札の撤廃も検討するとしています。方針を抽象的な理念にとどめず、現場の声をボトムアップで反映した点が特徴です。


JR北海道・JR東海も続く

JR北海道は、社員の人格を否定する言動や暴力、過剰な要求などを対象に、グループとしての方針を策定。JR東海も2025年2月、「JR東海グループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、従業員の人権を守る姿勢を示しています。JR各社・大手私鉄が、ほぼ足並みを揃えて方針を公表した形です。


まとめ

鉄道業界の特徴は、個社の取り組みに先立って、業界団体が共通の定義とポスターを用意した点にあります。駅や車両という「逃げ場のない空間」で不特定多数の利用者と接する業態だからこそ、1社だけでなく業界全体で足並みを揃える必要があったのだと考えられます。そのうえで、JR東日本の「対応しない」という明文化や、東急電鉄の実態調査公表のように、各社が自社の現場に合わせた一歩を加えている構図が見えてきます。


自分の自治体で使える制度を調べる

カスハラ対策に関する支援制度は、国・都道府県・市区町村がそれぞれ独自に設けており、内容も対象も大きく異なります。

当サイトでは、国・47都道府県・政令指定都市・中核市などの支援制度を一次情報から調査し、データベースとして公開しています。

▶ カスハラ支援制度データベースを見る


出典

タイトルとURLをコピーしました