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【第1回】そもそもカスタマーハラスメントとは何か?なぜ今、対策が義務化されたのか

基礎知識・法改正

2026.10.14 更新(初稿:2026.08.07)

2026年10月1日、改正労働施策総合推進法により、すべての企業にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務付けられました。なぜ今、法律で義務化するところまで話が進んだのでしょうか。この連載の第1回では、カスハラの定義を整理したうえで、増加の実態と、義務化に至った背景を解説します。

そもそも「カスハラ」とは

厚生労働省のマニュアルや東京都の指針では、次の3つの要素をすべて満たす行為を「カスタマーハラスメント」としています。

  1. 顧客、取引先など第三者(顧客等)からの言動であること
  2. 要求内容が妥当性を欠く、または手段・態様が社会通念上不相当であること
  3. それによって従業員の就業環境が害されること

正当なクレームとの境界線は、現場でもっとも判断に迷うポイントです。2つの軸による判断フレームや実際の判例まで踏み込んだ解説は「カスハラと正当なクレームの違いとは?判断基準・チェックリストを徹底解説」にまとめていますので、あわせてご覧ください。

データで見る、増加の実態

厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度)によると、過去にカスタマーハラスメントを受けた経験がある労働者は10.8%で、パワーハラスメント(19.3%)に次いで多く、セクシュアルハラスメント(6.3%)を上回っています。

接客頻度との相関も明らかです。ほとんど顧客と接しない労働者の経験率が5.3%であるのに対し、勤務日にほぼ毎日顧客と接する労働者では17.4%まで上がります。

企業側の実態としては、カスタマーハラスメントの相談があった企業は27.9%にとどまる一方、相談を受けた企業のうち実際に「ハラスメントに該当する」と判断した割合は86.8%と、パワーハラスメント(73.0%)やセクシュアルハラスメント(80.9%)より高くなっています。「相談されにくいが、相談されれば深刻なケースが多い」のがカスタマーハラスメントの特徴といえそうです。

行為者の内訳は、顧客等(患者やその家族を含む)が82.3%、取引先等の他社の従業員・役員が22.6%。内容としては、継続的・執拗な言動が57.3%、威圧的な言動が50.2%と、精神的な圧力を伴うケースが中心になっています。

なぜ今、社会問題化したのか

カスハラが「どの企業にとっても他人事ではない」問題として扱われるようになった背景には、いくつかの構造的な変化があります。

① 人手不足の深刻化 少子化や人手不足が「限界」に達しつつあるなかで、従業員一人ひとりの負担や離職の影響がこれまで以上に経営に直結するようになりました。パーソル総合研究所の分析でも、人手不足の深刻化がカスハラへの厳格な対応を後押ししていると指摘されています。

② SNSでの中傷の増加 UAゼンセンの調査では、「SNS・インターネット上での中傷」を印象に残った迷惑行為として挙げる回答が、2020年の前回調査より増えています。従業員個人が特定され、ネット上で攻撃されるリスクが、心理的な負担をさらに重くしています。

③ 「お客様は神様」という意識の変化 クレームを貴重な意見として重視してきた小売・サービス業の文化が、従業員の離職や経営リスクと天秤にかけられる時代になりました。大手企業の幹部からも「お客様は神様という時代は終わった」という発言が出るなど、顧客優先一辺倒の姿勢そのものが見直されつつあります。

なぜ「義務化」という形に至ったのか

社会問題化を受け、まず動いたのは自治体でした。東京都が全国に先行してカスタマーハラスメント防止条例を制定し、2025年4月1日に施行しています。

国としても対応が必要という流れを受け、2025年6月11日、改正労働施策総合推進法が公布されました。そして2026年10月1日、この法律に基づくカスハラ防止措置が、すべての事業主に義務付けられる形でスタートしています。自治体の条例が先行して社会的な規範を作り、その後に国の法律が企業への義務付けという形で追いついてきた、という流れで理解しておくとよいでしょう。国の法律と自治体条例の違いについては「法律と条例の違い」で詳しく解説しています。

まとめ

カスハラは、人手不足やSNSの普及といった社会構造の変化の中で深刻化し、自治体条例・国の法律という2段階を経て、企業にとって「対策しないという選択肢がない」問題になりました。

次回・第2回では、2026年10月1日に施行された改正労働施策総合推進法が、企業に具体的に何を求めているのかを解説します。

次回・第2回

何が変わる?「改正労働施策総合推進法」とカスハラ対策義務化の要点をわかりやすく解説

第2回を読む →

出典・参考

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